HOT WEATHER CAMOUFLAGE UNIFORM
RDF PATTERN/LC-1 LEAF
 HOT WEATHER CAMOUFLAGE UNIFORM(熱帯気候迷彩服)はアメリカ軍緊急展開部隊RDF:Rapid Deployment Forceが使用していた事から、RDFパターンまたはALICE装備支給時期頃から多用された事からLC-1(LC)リーフなどと呼ばれる熱帯地域向けの戦闘服である。1970年代アメリカ軍はベトナム戦争を経験し、カモフラージュ戦闘服の迷彩効果を再認識した。ベトナム戦争後のアメリカ軍各部隊は継続してこれまで利用してきたオリーブグリーンのトロピカルユニフォームやERDLカモフラージュパターンのユニフォームを使用してきたが、改善点などを考慮し、1970年代中頃から後半にかけてHOT WEATHER CAMOUFLAGE PATTERN UNIFORM(RDFパターン)を開発した。
製造はSELMA APPAREL社、WATAUGA APPAREL社他が担当し、一部はアメリカ軍の装備製造供給部門DPSC:Defense Personal Support Centerでも製造された。
RDFパターンはこれまでアメリカ軍がベトナム戦争で利用してきたトロピカルユニフォームから基本的な縫製を全面的に見直しまったく新しいデザインとなった一方で、迷彩パターンはベトナム戦争中に海兵隊及び一部の部隊で使用されたERDLカモフラージュパターン(リーフパターン)をほぼそのままの形で利用して製作されている。これは戦時中に余剰品となった多くのERDLパターンの生地がそのまま流用されたと考えられる。
また縫製部品毎に分業で製造されていると見られ、在庫、品質管理が甘く、パーツ毎に印刷パターンや印刷色が異なる物が多々存在する。ERDLパターンは初期の低地向けグリーン(ローランド)リーフと後期の高地向けブラウン(ハイランド)リーフが存在するが、初期のRDFパターンにはその双方が存在する他、一部パーツに双方の記事が混在したものも存在する。物量的にはグリーンリーフを使用したRDFパターンは僅かで大半はブラウンリーフ色のもので製作されている。
素材はコットン100%のリップストップ素材が採用されている。これは熱帯地域での発汗などの対策と薄手の生地になる事での強度の維持などが考慮された結果で、ベトナム戦争時に多用されたトロピカルユニフォームと同じ素材構成である。
RDFパターンは1983年のアメリカ軍によるグレナダ侵攻(アージェントフューリィー)作戦で一部部隊に使用された他、以降もレンジャーや海兵隊、特殊部隊などで1990年頃まで僅かに使用された。
一般部隊レベルでは1980年にはウッドランドカモフラージュの試作が始まり、1981年には本格的な支給が開始された為、RDFパターンそのものは限定的かつ短期間での使用に留まった。

RDF:United States Rapid Deployment Force
アメリカ軍緊急展開部隊は1977年ジミー カーター政権下で発案されたアメリカ陸軍、海兵隊を中心にした統合部隊である。冷戦下のアメリカ軍は朝鮮半島及び西ドイツを主観に於いた戦略ドクトリンを持っていたが、中東地域における低強度紛争などに対応した部隊の必要性を認識していた。
計画当初のRDFは基地設備の無い地域への派遣、主に北朝鮮、中東、ペルシャ湾岸などを中心に見据えていたが1979年に始まったソビエト連邦によるアフガニスタン侵攻が始まるとその関心は一気に中東へ向き、湾岸地域とりわけ油田産出地域を主観に於いた戦略を軸にした部隊となっていく。
RDFは1980年3月1日にRDJTF(Rapid Deployment Joint Task Force)として結成され、部隊本部をフロリダ州タンパのマクディール空軍基地に置かれた。RDFは陸軍、海兵隊の機動部隊を中心にアメリカ軍特殊部隊を加えた機動性、即応性を重視した部隊構想を持っていた。1982年4月にはRDFの運用地域を中東及び中央アジアとする議会決定が行われた。1983年にはRDFはその役目を現在のアメリカ中央軍United States Central Command通称USCENTCOMに引き継ぎその役目を終えた。

COAT, HOT WEATHER, CAMOUFLAGE PATTERN,
RDFパターンのジャケット(コート)は従来のトロピカルユニフォームのカモフラージュモデルであるERDLパターンと同じ迷彩パターンを持つものの大きく異なる縫製デザインとなっている。デザイン上の大きな変更点としてはポケットを従来の傾斜したスタイルからユーティリティユニフォームなどで見られた水平スタイルに変更された事でこれはコート及びトラウザース双方に適用されている。また生地接合部の強度を増す為の縫製が従来のトロピカルユニフォームとは異なる。ジャケットの開口はオーソドックスなボタンフロントとなっている。
ジャケット背面。背面上部で生地を接合するデザインでこれまでの戦闘服同様に通気性などを考慮しジャケットの裾は出して着用する。
コントラクトラベルは襟の内側に縫い付けられている。トロピカルユニフォームでは襟元にサイズラベル、下部ポケット内側にストックナンバーラベルが縫い付けられていたが、RDFパターンではサイズ、ストックナンバー、コントラクトナンバー、ケアマニュアル等がすべて一カ所に集約記載されている。
COAT, HOT WEATHER, CAMOUFLAGE
PATTERN, 100% COTTON
DLA100-80-C-3407
SELMA APPAREL CORP.
各部位の縫合部分。RDFパターン(写真上)とERDLパターン(写真下)縫合部が二重に補強されたデザインに変更され耐久性が向上している。
袖など各部も同様に補強されている。
RDFパターン(写真上)とERDLパターン(写真下)
ポケットの配置はトロピカルユニフォーム及びERDLパターンと同様で胸部の左右に一カ所ずつ、腰部左右に一カ所ずつ。ポケットにはフラップが配置されそれぞれ2個のボタンで固定するデザイン。海兵隊が使用するジャケットには左胸ポケットに海兵隊ロゴとUSMCの記載がスタンプされている。
それぞれのポケット位置の呼称はCARGO LEFT BREAST,CARGO LOWER LEFT FRONT,CARGO LOWER RIGHT FRONT,CARGO RIGHT BREAST
CARGO RIGHT BREAST
胸部ポケットは片側にマチが設けられ、収納時にはアコーディオン状に広がるデザインになっている。写真は右胸のポケットで底部には水抜き用のドレーンホールが設けられている。
CARGO LEFT BREAST
左胸部のポケット内側にはペンポケットが配置されてりフラップはペンを通す為に貫通式のデザインになっている。

CARGO LOWER RIGHT FRONT
前面腰部に配置されたポケットは胸部よりも収納力が高く、左右と底面の三面がアコーディオン状に展開できるデザインで底部左右にそれぞれドレーンホールが設けられている。
胸部ポケットの比較
ERDLパターン(写真左)とRDFパターン(写真右)。ポケットが斜めに配置されているERDLに対しRDFは水平に配置されている。またフラップ、ポケットの形状も完全に異なる。
腰部ポケットの比較
ERDLパターン(写真左)とRDFパターン(写真右)。胸部同様にそれぞれ異なったデザインになっている。またERDLでは丸い縫製のポケットに対してRDFパターンではスクエア状のデザインになっている。
袖口は二段階で調整可能なデザインになっている。
裏地
印刷時の染料インクの浸透具合などで様々な要因で状態が異なる。
同一個体でもパーツによって状態にばらつきが見られる。

TROUSERS, HOT WEATHER, CAMOUFLAGE PATTERN,
トラウザースは全体的にこれまでのトロピカルユニフォームを踏襲するデザインであるが、コート同様に縫合部が補強されている。ポケットは腰部左右と臀部左右、大腿部外側に大型のカーゴポケットが配置されている。腰部のポケット以外はフラップが配置されプラスチックボタンで固定可能になっている。足首部分にはロープが配置され絞り込む事で泥や砂の侵入を防ぐ事が可能になっている。このロープの形状はトロピカルユニフォームと同じものが使用されている。腰部にはベルトループが配置され左右にはサイズ調整用のストラップが配置されている。
TROUSERS, HOT WEATHER,
CAMOUFLAGE PATTERN
DLA100-78-C-0891
100% COTTON
WATAUGA APPAREL CORP.
トラウザース前面にはファスナーと左右にポケットが配置されている。
ファスナー部分の比較
ERDLパターン(写真左)とRDFパターン(写真右)。ERDLでは金属ジッパーが使用されていたが、破損時の修繕の容易さや腐食、摩耗などを考慮し、RDFパターンではポケット部分と同じプラスチックボタンを使用している。ファスナーのボタンは4個配置されている。素材の種類が減少した事でコストダウンや現地での修理も容易にしている。
ボタン方式になり股間部分に隙間ができる事それを隠す為のカバーパーツが配置されている。
トラウザース後方の臀部にはポケットが配置されプラスチックボタン1つで開閉可能になっている。(写真左)ウエスト調整用ストラップ(写真右)はトロピカルユニフォームと同じデザインのものが配置されている。
大腿部側面には大型のカーゴポケットが配置されている。フラップはプラスチックボタン2個で固定されるが、前方側フラップは100%開放できないデザインとして、不用意に収納品を脱落させないデザインになっている。マチは底部と後方側側面の2面に設けられている。
カーゴポケットの比較
ERDLパターン(写真左)とRDFパターン(写真右)。フラップの形状が異なる他、ポケット本体のアコーディオンデザインが全く異なる。三分割された様なデザインのERDLに対して、RDFパターンは中央で分割されたデザインになっている。またERDLパターンでは側面にマチを設けているが、RDFパターンでは底部半分と後方にマチを設けている。
膝部分には左右にタックがあり関節部分の補強と柔軟性の確保をしている。
裾部分は従来のトロピカルユニフォーム同様にロープで足首を絞るデザインで、泥や砂、害虫などの侵入を防ぐ。